横浜地方裁判所 昭和43年(ワ)252号 判決
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〔判決理由〕一、<証拠>によると、原告車は被害車にセンターライン直上あたりで接触して停止し、これに少しひきずられて、本件交通事故が発生したことが認められる。
二、<証拠>によると、本件道路は巾員一七米で、その区分は、両側に1.5米の低速車線があり、センターライン左右両側に各3.5米の走行車線と追越車線とがある。被害車がユーターンを開始してその後輪がセンターラインにかかる迄5.3秒かかること。被害車の最少回転半径は8.3米であること。本件道路の自動車の制限時速は六〇粁、自動二輪車である原告車(九〇cc)のそれは五〇粁であることが認められる。
三、先ず、被害車がユーターンを開始するときの原告車との距離について判断をする。
<証拠>によると、被告車がユーターンするにあたつて、道路左側に一旦停車し、山本が後方を注視して原告車を認めたとき、被告車と原告車との距離は125.3米であつたことが認定できる。<証拠判断省略>
四、次に、被告車がユーターン中にバックしたかどうかについて検討する。
本件道路の巾員が一七米で、被告車の最少回転半径が8.3米であること、前記認定のとおりである。そうすると、被告車がユーターンするに当つて、一旦停車した位置が、道路左側の、低速車線と走行車線の境界線に、一ぱいに車をよせた位置であるとしても、なお道路の巾員は15.5米残つているから、被告車は余裕をもつてユーターンできること明白である。
<証拠>によると、被告車はユーターンを開始してから衝突するまで、バックしたことは全くなかつたことが認められ、<証拠判断省略>
五、本件道路が、アスフアルトで舗装された100分の4.99の下り勾配の直線路であること、本件交通事故発生の直前、原告車が追越車線を、他の乗用車が走行車線を、川崎・溝の口方面から厚木方面に向けて、平行して進行していたことは当事者間に争いがない。
前記認定のとおり、原告車の制限時速は五〇粁であるけれども、右のような道路の状況にある場合には、原告車は、往々にして、加速度と追越のため、右制限時速を一〇粁ほどこえた六〇粁位の速度で進行してくることも当然予想されるところである。(原告車が追越車線にあるときは、一応、乗用車と平行して走るか、或は乗用車が速度を落したときにこれを追越すものと考えるのが通常であり、時速六〇粁以上を出してこれを追越すということは考えられない。)従つて、ユーターンを開始しようとする運転手は、直進する後続車に優先権があるのであるから、後続車が時速六〇粁で進行して来ても安全にユーターンを完了するだけの距離をおいて回転をはじめなければならないものと解される。
これを本件についてみるに、被告車がユーターンを開始してその右後輪が道路のセンターラインにかかる迄の時間が五、三秒であること前記認定のとおりである。原告車が、時速六〇粁で進行したときは、秒速が約16.6米であるから、五、三秒間に87.98米進行し、被告車との間に37.32米の距離を残すことになる。そうすると、原告車がそのまま進行すると、これが衝突地点に到達するかなり以前に完全にユーターンを完了することになる。従つて、山本が125.3米の距離をおいてなしたユーターンは、何ら運転上の過失も認められないし、道路交通法第七〇条の安全運転の義務に違反することもない。本件交通事故は、実の速度の出しすぎによる一方的な過失によつて発生したものと解するのが相当である。
六、被告が被告車の運行供用者であることは当事者間に争いがない。そこで、免責の抗弁について判断するに、本件交通事故の発生について、被告車の運転者山本に過失がなく、被害者実に過失があつたこと前示のとおりである。そして、本件交通事故発生の状況によると、被告の過失の有無や、加害車である被告車の構造上の欠陥、機能の障害は何等因果関係を有しないこと明白であるから、これらを論ずる迄もなく、免責の抗弁は理由がある。
よつて、被告は自動車損害賠償保障法第三条による責任はない。(石藤太郎)